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見解


小径腎癌患者をドナーとした病腎移植に関する見解

 私たちは、臓器移植を受けた移植者およびその家族、待機者、支援者など約2000人を構成員とする患者団体です。1995年より共に力をあわせ一人でも多くの献腎移植待機者が人工透析から離脱できることを目的に広く国民に臓器移植、臓器提供の理解を求める臓器移植普及啓発活動を推進しています。
 私たちの悲願でありました改正臓器移植法が成立しまもなく3年を迎えようとしています。期待されるような臓器提供の増加がみられることなく推移していることに危機感を抱いています。欧米では日本の何倍もの臓器提供がなされていることはご存じの通りです。しかしながら欧米におきましても臓器移植、臓器提供の国民的合意を得るまでに10年、20年を経て現在に至っていることも事実です。  
 しかしながら、私たちはこのことが良いと思っているわけではありません。一日も早く、一人でも多く献腎移植待機者が人工透析から離脱できることを強く望んで活動をし続けています。
 先の厚生労働省先進医療専門家会議において病腎移植の先進医療への適用が審議され「否」と判断されましたことはご承知の通りです。医学に浅学な私たちは医学の視点からではなく医療を受ける立場、患者の立場からこれまで病腎移植を考えてきました。
 現在、小径腎癌の標準治療は世界的に推奨される腎部分切除術であり、私たちはこの術式を患者の将来の健康確保の視点から強く支持しています。病腎移植は2006年に一般に報道されました。この約7年間で小径腎癌の治療法も大きな進歩を遂げ、他の内科的治療も進み、これらを組み合わせることで小径腎癌の温存治療は更なる進歩を遂げていくことと推察します。
 私たちは、如何なる病気であっても患者の利益が第一義とされる医療の提供を望んでいます。小径腎癌患者をドナーとした病腎移植が先進医療として承認され、保険適応となった場合、多くの小径腎癌患者が不利益を被ると考えます。小径腎癌患者が主治医から「ドナーになりますか?」と聞かれた時、たとえデメリットについての説明があったとしても、お世話になる主治医からの提案を拒否することは実際には困難と考えます。
 小径腎癌患者の将来の安心、健康の確保を考慮すれば小径腎癌の治療は腎摘出ではなく腎部分切除が妥当と考えます。従って、私たちは小径腎癌患者をドナーとした腎移植が現状および将来の一般治療として成さないと判断します。  
 私たちは、「ドナーご家族が胸を張って歩くことのできる社会」「移植を必要とする国民が日本人によって救われる社会」の実現を目指し、臓器移植でしか救われない患者の救命、辛苦の解放に向けて最大の努力をし続けて参ります。

                          平成25年5月12日
                特定非営利活動法人 日本移植者協議会
                          理事長 山本 登



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