日本移植者協議会ニュース |
新型インフルエンザ情報 号外2(2009/11/02)-2
寺尾慧教授からインフルエンザが疑われた場合の注意
1.38℃以上の発熱に、咽頭痛(のどの痛み)、咳などの上気道症状、さらに鼻汁、鼻閉、頭痛、倦怠感がある場合は新型インフルエンザ、あるいは季節性インフルエンザが疑われます。しかし上記の症状は風邪でも見られます。上記の症状に
(1)関節痛、筋肉痛があるか
または
(2)下痢、嘔吐がある場合
はインフルエンザの可能性が高いと考えられます。
2.上記の症状がある場合は出来るだけ早急に医療機関を受診して、インフルエンザの検査を受けましょう。夜間であっても翌日まで待たないでできるだけ速く受診して検査を行い、インフルエンザの場合は治療を開始することが大切です。待合室で他の患者からの曝露、他の患者への曝露を避けるためにマスクを着用するなど、十分な注意と配慮が必要です。
3.インフルエンザ簡易迅速検査(迅速抗原検出キット)の検出率は10〜50%とされ、実際にはインフルエンザに感染していても、その50%以上は検査が陰性となる可能性があります。また簡易迅速検査では、新型インフルエンザと季節性インフルエンザを鑑別することはできません。
4.インフルエンザの簡易迅速検査で陽性となった場合は、新型インフルエンザあるいは季節性インフルエンザの感染の可能性が高く、多くの場合タミフルが処方されます。
タミフルは成人および体重37・5?以上の小児で腎機能が良好な場合は、1回75?、1日2回、5日間服用します。
腎機能が低下している場合(10?/分∧Ccr∧=30?/分)は1回75?、1日1回、5日間服用します。
生後12月以上の小児で腎機能が良好な場合の用量は下記の通りです。
体重24〜37・5? 1回60?、1日2回、5日間
体重15〜23?、 1回45?、1日2回、5日間
体重15?以下、 1回30?、1日2回、5日間
小児で腎機能が低下している場合(10?/分∧Ccr∧=30?/分)は上記の1回量を1日1回、5日間服用します。
5.インフルエンザの簡易迅速検査で陰性となった場合も、上記症状がありインフルエンザ感染の可能性が高い場合は、タミフルを服用した方が無難です。この場合はタミフルは、予防投与として1回75?、1日1回、7〜10日間が自費で処方されることになります(1カプセル75? 310円)。
腎機能が良好な場合は10日分処方してもらい、1回75?、1日2回、5日間服用します。
腎機能が低下している場合(10?/分∧Ccr∧=30?/分)は5日分処方してもらい、1回75?、1日1回、5日間服用します。
6.タミフル服用開始後、通常は2〜3日で解熱しますが、2〜3日服用しても解熱しない場合は、季節性インフルエンザのうちソ連型である可能性が高いと考えられます。ソ連型インフルエンザウイルスの99.6%はタミフル耐性であるため、この場合はリレンザに変更する必要があります。
7.タミフルの服用により下記の副作用が出ることがあります。下記の症状が認められた場合は直ちに医療機関に受診してください。
(1)ショック?冷や汗、めまい、意識がうすれる、血の気が引く、息切れ、血圧低下
(2)アナフィラキシー様症状?じんましん、眼と口のまわりの腫れ、動悸、息切れ、息苦しさ、意識の低下
(3)肺炎?発熱、悪寒、咳、息切れ、痰
(4)肝機能障害?黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、尿が褐色になる、吐き気、嘔吐、食欲低下、かゆみ、体がだるい、意識低下(劇症肝炎)
(5)白血球減少?発熱、のどの痛み
(6)血小板減少?鼻血、歯ぐきの出血、あおあざ、皮下出血、血が止まりにくい
(7)意識障害・異常行動?譫妄、幻覚、幻聴、妄想、意識の低下、判断力の低下、とっぴな行動、けいれん
(8)その他?腹痛、下痢、吐き気、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、急性腎不全、出血性大腸炎など
8.妊娠中の服用の安全性は不明であるため、妊娠中または妊娠している可能性がある場合は、治療による有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。妊娠あるいはその可能性がある場合は必ず医師に告げてください。
また授乳している場合は、タミフル服用中は授乳を避ける必要があります。
9.薬剤耐性の観点からタミフルの予防投与は本来勧められませんが、下記の場合には予防投与が許されます。
(1)新型インフルエンザウイルスに曝露された、あるいはその可能性が強い臓器移植患者。
(2)確実に曝露された移植患者には、曝露された日から10日間、1回75?、1日1回服用します。
インフルエンザウイルスへの「曝露」とは、感染患者が2メートル以内で咳、くしゃみをしたり、咳やくしゃみにより飛沫した分泌物が付着した物に触れたり、同居する家族がインフルエンザにかかったりした場合を指します。
なおインフルエンザ感染患者は、症状が発現する前日から、症状が消失し、解熱してから24時間以内は、他人への感染性があるとされています。
10.家族がインフルエンザに感染した場合は、少なくとも感染者は別室に隔離し、その部屋には立ち入らないことが原則です。しかし空気中への飛沫、飛沫した分泌物が付着した机、家具、ドアの取手などから感染することもあるため、窓を開けて空気を入れ換えたり、机やドアの取手をアルコール消毒したりする必要があります。可能であれば親戚の家に泊まらせてもらうなどした方が無難です。
家族がインフルエンザに感染した場合は、発症する前日から他人にうつす可能性があるため、前項のインフルエンザウイルスへの曝露に相当します。医師と相談し、予防的にタミフルを服用することも考慮してください。
11.インフルエンザ患者は、症状が発症する前日から、症状発現後5日間は、他人への感染性があるとされています。免疫抑制患者や小児患者などでは10日以上感染性がある場合もあります。また症状が発現する前日から、症状が消失し解熱後の24時間までは感染性があるという説もあります。
12、A型インフルエンザウイルスは、机、ドアの取手、家具、電車のつり革のような堅い物質の表面では24〜489時間生存します。布や紙のような物の表面では8〜12時間生存します。
また乾燥したウイルスは3時間しか生存できませんが、濡れた表面では長時間生存すると言われています。
上記の物体に触れた手で目、鼻腔、口腔などの粘膜表面に触れると感染する可能性があるため、頻繁に手洗いをすることが重要です。また大気中の飛沫からの感染の防止にマスクの着用が有用とされています。
13、ワクチン接種、タミフルなどの抗ウイルス薬の服用について、最大公約数的な事項について要約しましたが、個々により病状、免疫抑制薬の投与量、ワクチンや薬に対する反応は異なるため、必ず移植担当医と相談の上、決めて下さい。
日本移植学会ガイドライン(4)
日本移植学会のガイドラインには患者さんへの注意喚起文章が掲載されています。
日本移植学会から、移植患者さんへのインフルエンザ対策についてのご注意
●インフルエンザの予防
人ごみを避けましょう。
手洗い、うがいを励行しましょう。
栄養や睡眠を十分にとり体調を整えましょう。
ワクチンは担当医と相談の上、なるべくうつようにしましょう。(ただし、ワクチンをうったからといって絶対にかからなくなるわけではありません。引き続き注意が必要です。)
● インフルエンザにかかっているひとに接触したら、すぐかかりつけの移植医に相談して指示を受けて下さい。
(お薬を予防的に服用していただく場合があります。ただし、この予防投与の場合、保険が効かずに自費となりますので、かかりつけの先生とよくご相談ください。)
咳、喉の痛み、下痢などの症状がでないか気をつけ、1 日1回検温をしましょう。
●インフルエンザのような症状が出たら、すぐかかりつけの移植医に相談して指示をうけてください。
(お薬を服用していただきます。また、免疫抑制剤を減量したり中止したりすることがあります)
移植施設から遠くてすぐには行けない場合には、移植担当医と相談の上、近隣の相談窓口に連絡してください。医師同士で相談の上、近隣の指定医療機関での診断治療をうけていただきます。
●インフルエンザにかかった場合の自宅療養の仕方
・安静を保ち、保温しましょう
・水分、栄養の補給に努めましょう
・うがい、手洗いをしましょう
・マスクを着用しましょう
お薬は、解熱剤などの服用も含めて担当医の指示に従ってください。
重複するところもありますが参考にアメリカ移植学会(AST)感染症コミュニティ/国際移植学会(TTS)移植感染症部門が出したガイダンスの一部を掲載します。
抗ウイルス薬の日常的な予防投与と曝露後の予防的投与
・最新のエビデンスおよび薬剤耐性の懸念から、バンデミック期間に日常的にオセルタミビルを予防的投与することは推奨きれないが、特定の患者に対しては考慮してもよい。
・新規インフルエンザA/H1N1への曝露が確認されている臓器移植患者には、インフルエンザの初期症状に注意するよう助言されるべきである。あらかじめ処方箋を(抗イルス薬の収用量とともに)渡しておき、初期症状が現れたら服用を開始させてもよい。
・あるいは、すでに曝露した移植患者には、最後に曝露したと考えられる日から10日間、抗ウイルス薬を予防的に投与してもよい。しかし、予防的投与を受けた免疫不全患者においてオセルタミビル耐性例が発生している。
臓器移植患者とその家族に関するガイドライン
・インフルエンザと診断された患者との接触を避ける。
・特に咳やくしやみをした後は、十分に手の洗浄もしくは消毒(消毒用アルコールジェルを使用)を行う。これはH1Nlに感染するリスクを低減させる最も有効な方法である。
・ウイルスを広げることになるため、手で目、鼻、口に触らないこと。
・咳エチケットを守る。咳やくしやみをする時は、ティッシュペーパーで鼻と口をおおい、使用したティッシュペーパーをゴミ箱に捨てること。ティッシュペーパーがない場合、手にウイルスが付着しないよう、袖でおおって咳やくしゃみをすること。
・流行期間中は、定期健康珍断や検査のための通院をなるべく控えること。
・かかりつけの医療機関で受けられる場合は、季節性インフルエンザと新型インフルエンザH1Nlの両方の予防接種を受けること。
・旅行に関して臓器移植患者に対する制限は特にない。
日移協事務局より
移植後6ヶ月以上経っている方は、新型も季節性もインフルエンザ・ワクチンの接種を受けた方が良いでしょう。
†既に季節性インフルエンザのワクチン接種が始まっています。今年は、新型インフルエンザへの心配もあり関心が高まっています。そのため季節性インフルエンザのワクチンも不足気味とのことです。本文の中にもありましたが、抗体ができるまで2週間以上かかります。早めに接種してください。
そしてマスク・手洗い・うがいなど予防に十分気をつけ、かかったかなと思ったら、主治医の先生に相談して、早めに抗ウイルス剤を投与して戴くことでしょう。また家族がかかった時は、接触を避け、予防的に抗ウイルス剤の投与も必要かも知れません。
†主治医の先生と充分ご相談の上、対策をおとりください。
なおインフルエンザについてのご相談及びご質問は、日移協の大久保へお願い致します。
みな様、くれぐれもお気をつけください。
お問い合せ先:NPO日本移植者協議会
〒530-0054 大阪市北区南森町2-3-20 プロフォートビル507号
TEL:06-6360-1180・FAX:06-6360-1126
E-mail:nichii@guitar.ocn.ne.jp
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