日本移植者協議会ニュース
新型インフルエンザ情報(2009/09/10)

新型インフルエンザの流行の経緯と現状
 今年4月に豚からによる新型インフルエンザがメキシコで発生し、その拡大に伴いアメリカ、カナダでも確認され、国内への持ち込みを防ぐ対策がとられました。しかしながら5月になり、二次感染による患者が関西地区で見つかり、拡大したため、関西地方では、学校閉鎖が相次ぎました。
 その後5月下旬頃からは、感染の拡大も下火となり、通常の冬季の拡大期までは、収まるかに見えました。ところが7月中旬から感染者が徐々に増加し始め、8月に入り感染者が急増しました。
 今回の新型インフルエンザは、発症者の年齢分布に特徴があり、わが国においては、10歳未満が19.3%、10歳代が47%と20歳未満がほぼ3分の2を占めています。これは、世界的にも同様の傾向を示しています。9月8日現在の休校や学級閉鎖は、前週に比べ2,8倍となり42都道府県の計772施設となりました。都同府県別では、東京127、大阪66、兵庫50、沖縄と千葉各45の順となっています。また感染症発症動向調査でも、流行入りと注意喚起を行っている都道府県は、沖縄(他の都道府県の10倍の発生率)、奈良、滋賀、福島、東京を初め多数あり、大都会圏だけでなく、全国的に感染が広がっていることがわります。
 新型インフルエンザの感染者の状況ですが、わが国では必ずしも死因が新型インフルエンザと確定されていませんが12人の方が亡くなっています。WHOの報告では、世界的に致死率は0.4%と発表しています。現時点で、わが国は、0.1%程度と推定されていますが、今後流行が広まった場合、致死率が上昇する可能性も充分考えられます。なお季節性インフルエンザの致死率は、約0.5%です。
 9月8日に厚生労働省が発表したところでは、ワクチン接種は、10月末から始まり、まずインフルエンザの診療にかかわる医療従事者から実施し、次ぎに妊婦と重症リスクとなる持病がある人、11月末からは、1歳から就学前の小児、1歳未満の小児の両親、小学生と順次ワクチンの供給状況を見ながら広げて行くとのことです。
 接種場所は、国の委託を受けた医療機関になりますが、移植者の場合は、現在かかっている医療機関で受けることになります。接種は、3〜4週間の間隔で2回受け、費用は8千円程度と言われています。
 ワクチンには、国産と輸入があります。国産ワクチンの製造が遅れていて、優先接種の対象とされる1900万人分を年度内に確保することは、難しい状況です。輸入ワクチンは、国内において未承認で、まだ臨床試験も行なわれていません。ただし輸入ワクチンのほうが、効果を高める添加物が含まれており、副作用も懸念されるが、有効性も高いとも言われています。輸入ワクチンの副作用については、未知であり、それが起こった場合の保障について、国が保障することも検討されていますが、そのための法整備も次の臨時国会において検討すると言うような段階です。

今後について(ワクチンの優先接種)
 新型インフルエンザワクチンの優先接種ですが、WHOやCDC(米国疾病予防管理センター)の指針、また厚生労働省の指針でもハイリスク者の基礎疾患を有するものとして、心疾患、呼吸器疾患、肝疾患、腎疾患、神経疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)、免疫抑制状態(薬剤に起因する者やHIV感染者、がん患者を含む)とされています。この様に免疫療法を受けている移植者は、当然対象となります。予定通り実施されますと11月初旬からとなります。
 9月8日に厚生労働省臓器移植対策室へ行き話を聞きましたが、臓器移植対策室では、新型インフルエンザのワクチン優先接種については、全く状況を把握していませんでしたので、至急確認するよう要請しました。
 日本移植学会では、新型インフルエンザのワクチン接種及び対策についての指針をまとめる作業をしており、来週開かれます日本移植学会総会の中で、9月17日に発表するとのことです。その後の状況につきましては、次号JTRニュース(9月下旬発行予定)にて、お知らせします。

ワクチンの有効性
 なおワクチンの有効性ですが、接種をしても抗体ができなくては、意味がありません。そのため移植直後は、臓器によって免疫抑制剤の量が違うため、その期間に開きがありますが、3ヶ月から1年は、抗体ができませんので、接種する意味がありません。接種時には、日本移植学会の指針もでており、各位移植施設に伝えられていると思いますので、可能かどうかは、主治医と相談してください。
 ただ移植後3ヶ月から1年以上経過している人でも、実際に抗体ができる率は3割程度と推定されています。即ちワクチンを接種すれば、それで良しと言うことではありません。まだワクチン接種を受けていない今も含め予防対策が必要です。

新型インフルエンザへの予防対策
 今までの季節性インフルエンザ対策と同じと考えてください。

(1)†† うがい、手洗いの励行(別紙を参考にしてください)
(2)†† できるだけ人ごみを避ける
(3)†† 咳やくしゃみ等からの感染を防ぐためにマスクを着用する
(4)†† 自己免疫力を高めるために、規則正しい生活をする

 充分な睡眠(疲労を蓄積しない)とバランスがとれた食事

 自己防衛として行うことができるのは、以上の点です。
なお当然ですが、冬季には季節性インフルエンザの流行も起こる可能性が高いです。そのため例年受けている季節性インフルエンザの予防接種も忘れず受けるようにしましょう。

新型インフルエンザの感染が疑われた時
 インフルエンザにかかると普通の風邪と違い、高熱がでます。38.5度以上の熱が出た時は、直ちに医療機関に行き、検査を受けてください。但し簡易検査で陰性となっても、実際は感染していることがかなりの割合であります。
 そのため38.5度以上の熱がある場合は、簡易検査の結果にかかわらず、タミフルまたは、リベンザの投与を受けてください。早ければ、早い方が、症状も軽く済みます。
 また家族に感染者がでた時は、タミフルまたは、リベンザの予防投与を受けてください。但し、これは自己負担となりますが、10日間服用しても4千円足らずの負担で済みます。
 ところがこの予防投与の対象疾患は、心疾患と腎疾患に限られていて、肺移植者や肝移植者は、処方を受けることができません。現在日本移植学会もこれを問題としており、我々としても早急に対応する必要があると考えています。

 以上、新型インフルエンザに関する情報をまとめてみました。まだ足らない情報もあると思います。次号JTRニュースでもこの問題を取上げますので、ご質問やご意見がございましたら、事務局までお寄せください。
 最新情報は、できる限りホームページに掲載します。


お問い合せ先:NPO日本移植者協議会
〒530-0054 大阪市北区南森町2-3-20 プロフォートビル507号
TEL:06-6360-1180・FAX:06-6360-1126
E-mail:nichii@guitar.ocn.ne.jp

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