平成２１年度事業報告書
平成２１年４月 １日から
平成２２年３月３１日まで
特定非営利活動法人日本移植者協議会
平成２１年度事業報告書
１ 当協議会及び我が国における臓器移植を巡る状況
昨年７月１３日、長年にわたり当協議会を始め臓器移植に関わる者全ての念願であった臓器移植法の改正が漸く実現した。当協議会が発足した直後の平成４年１月に脳死臨調の答申がだされ、それに添った形での臓器移植法が作られると信じ、法成立に運動したが、成立まで５年を要し、結果としてＷＨＯの指針を無視した世界に類のない臓器移植を進めないための内容となる法律が成立した。当協議会は、すぐさま改正運動を行ったが、国会内での改正への機運は、なかなか盛り上がらず、遅々として進まなかった。平成１６年になり、漸く自民党内での議論を経て、公明党との与党間で議論が始まった。当協議会も同年９月より臓器移植患者団体連絡会の各会と１２月からは日本移植学会とも協力し、国会議員の陳情活動を始め、延べ千人を超える国会議員への陳情を行った。
平成２１年度になり中山太郎先生の助言で、４月１４日に臓器移植患者団体連絡会主催で決起集会を国会に隣接する憲政記念会館で開催した。憲政記念会館は、４９８人の定員で、いままでのどの決起大会の会場より広い。平日の午前中と言う悪条件の中、果たして人が集まるだろうか全く自信はなかった。当協議会としても初めて往復葉書で関東周辺の全会員に参加を呼びかけ、５００人を上回る参加者があり、人が会場の外にまであふれた。これは国会議員に対し大きな圧力となり、漸く国会は、本格的に審議へと動き出した。
その後、Ｄ案が出るなど様々な反対派の妨害があったが、我々は、より精力陳情を続け、６月９日には、患者団体として前代未聞の全面の意見広告を日本移植学会と協力し東京新聞に掲載し、その新聞を全国会議員に配布した。１８日に採決が行なわれた。勝てると確信していたが、脈拍は速くなっていた。結果は、賛成２６３票、反対１６７票の大差で可決し参議院に廻されました。
７月になり、最後の票固めと、解散時期の時間との戦いだった。結局解散２日前の７月１３日に採決されることなり、何とか間に合った。参議院の採決は押しボタン方式で行われ、Ａ案に先立ち、臓器提供する場合に限り脳死を「人の死」とするＡ’案は反対多数で否決された。（投票総数２０７票、賛成７２票、反対１３５票）Ａ案は、投票総数２２０票のうち、賛成１３８票、反対８２票で可決成立した。
５年前から、ほぼ毎週上京し議員会館に陳情に行き、昨年の３月からは、週の半分は、東京で活動した。アメリカでは、党議拘束がなく、ロビーストが職業として成り立っているが、殆どの法律が政党間の話し合いで決定するわが国おいて、５年に及ぶ議員一人ひとりへのロビー活動は、前代未聞のことであり、恐らくわが国の憲政史上に残ることであろう。この法改正は、長年にわたる移植医療に関わる多くの人たちの努力と協力によって達成された偉業であった。
今回の改正では、親族への優先提供は平成２２年1月１７日にその他については７月１７日に施行されることになり、９月よりガイドラインの作成に向け厚労省臓器移植委員会とその作業部会において検討が行われた。
当協議会では、大久保理事長が厚労省臓器移植委員会と普及啓発作業班に参加し、ガイドライン作成に携わった。また臓器移植関連学会協議会ではワーキンググループを組織し、ガイドラインやネットワークの体制整備についての提言を纏めたが、大久保理事長はネットワークの体制整備を議論するワーキング２に班員として参加するだけでなく、他のワーキングにもオブザーバーとして積極的に参加した。
この提言は、最終的に３月に厚労省及び関係者配布され、新しいガイドライン作成に活かされた。
法改正がなったとは言え、これはスタートライン至ったに過ぎず、我が国の臓器移植には、まだ数々の課題を抱えている。これを一つずつ解決しなければ、我が国の移植医療の未来はない。
厚生労働省へは、臓器移植患者団体連絡会として毎年２回の要望書を提出し、折衝を行なってきたが、平成２１年度も前年に続き、法改正の運動のため、１１月に行っただけであった。長年にわたり「全ての移植者に障害者認定を」と要求し続けてきたが、漸く肝臓移植者が身体障害者1級に認定されることになり、平成２２年４月から実施されることになった。厚労省への我々の長年の働きが実を結んだものである。これにより、肝臓移植者が医療費の高負担に苦しむことなく、最小限の負担で医療を受ける環境が整った。今後は、膵単独や小腸移植者もその恩恵に与るように、強く訴えていかなければならない。
しかし現在障害者認定を受けている者も、各自治体の障害者医療助成事業の所得制限が大幅に引き下げ
られ、自己負担の多い更生医療に頼らざるを得ない移植者が増加しているおり、今後、より制限が厳しきなることも予想されており、これからも障害者としての認定を守るとともに、制度的後退がないよう監視し、また改善を訴え続けて行かなければならない。
また障害年金もほとんどが２年以内に支給停止もしくは、減級されており、この流れを止めることは容易ではないが、障害年金支給停止時期の延長に関して、今後もねばり強く訴えて続けて行かなければならない。
移植医療には、まだ改善、解決しなければならない様々な問題が多々ある。それらに対し当協議会の役割は、ますます大きくなっている。会員を始め移植者の力を結集して、国や自治体及び関係機関に対し、当事者の移植者としての立場から強く訴え続けなければならないが、彼らを説得するためにも、論理、データに基づいた提言をしていかなければならない。
２ 事業実施の総括
当協議会が２１年度に掲げた事業実施の方針は、以下の三項目であった。
第一は、臓器移植に関わる患者すなわち、臓器移植者と移植を必要とする患者にとっての最大幸福の追求である。
第二は、臓器提供者及びその家族の顕彰と保護である。
当協議会の掲げた「臓器移植においてもっとも重要なことは、臓器提供者及びその家族が顕彰され、尊敬される社会の形成であり、それなくして臓器移植の発展はない」の目標を実現すべく、その恩恵を受けた移植者として、国、関係機関に訴え、協力を得て、この様な社会の形成をめざすことであった。
第三は、臓器移植の普及啓発である。
平成２０年１月の内閣府世論調査でも過去２回の調査同様に、国民の約８０％が臓器移植に関する情報を不足していると回答している。また医療者の理解が進んでいないことも学会等の発表でも明らかになっている。臓器移植の普及啓発には、まず臓器移植への関心の喚起と正しい情報を広く伝えることが、最も重要であり、それに当協議会として寄与することを目的とした。
１）移植者の社会的地位向上及び環境整備
＊臓器移植患者団体連絡会の活動及び行政への働きかけ
臓器移植患者団体連絡会では、平成２１年度の活動は、前年度と同様に法律改正に特化し、活動を強化した。中山太郎先生の助言で、４月１４日に臓器移植患者団体連絡会主催で決起集会を国会に隣接する憲政記念会館で開催した。前項でも述べたように、この会は大成功を収め、法改正へ大きな弾みとなった。その後の活動の結果、７月１３日に参議院において賛成１３８票、反対８２票で可決成立した。
これは、当協議会発足以来、大きな成果であった。
厚生労働省への要望
平成２1年度は、法改正運動のため、前期の要望書提出は出来なかった。またドナー家族への対策について、全国腎臓病協議会と全国心臓病の子どもを守る会とで合意が得られず、参加は胆道閉鎖症の子どもを守る会とニューハートクラブ及び当協議会の３団体となったが、後期の１１月に臓器移植患者団体連絡会として厚生労働大臣宛に要望書を提出し、折衝を行なった。肝臓移植者への障害者認定と移植に関わる診療報酬の増額について重点的に陳情を行った。このところ各担当の反応は、あまり良くなかったが、今回肝臓移植者の身体障害者認定と移植医療の関わる診療報酬の増額については、我々の要望が受け入れられ、平成２２年４月から実施されるとのことになった。
移植医療の環境整備のためには、まだまだしなければならないことが多く、今後も引き続き関係団体と協力し、活動して行く。
臓器移植患者団体連絡会としては、大きな目標である法改正を実現し、今後の活動をどの様にするか見極めることが出来ていない。後期は、上記の厚生労働省への要望書提出と１０月１８日に例年通り銀座での臓器移植推進パレードを行なったが、日程の関係で東京都腎臓病協議会の参加も少なく前年に比べ大幅に参加者が減少した。
今後、臓器移植患者団体連絡会としてどの様な体制で活動するのか方向性を見出せないでいる。
２）臓器提供者及びその家族に関わる活動
常に当協議会では、先に述べたが臓器移植においてもっとも重要なことは、臓器提供者及びその家族が顕彰され、尊敬される社会の形成であり、それなくして臓器移植の発展はないとの方針を掲げ活動している。
平成２１年度は、臓器提供者及びその家族に対する以下の活動を行った。
「生命・きずなの日（ドナーの日）」記念祭５月１６日（土）全電通会館
今回は、ハワイから、ドナー家族のリンダ・フジカワさんと全米キドニーファンデーションオブハワイのＣＥＯ グレン・ハヤシダさんを迎え開催した。第２部のハートフルコンサートは、川口京子さんに懐かしい小学唱歌を中心に唄っていただいた。参加者が１５０人を超え、少しずつ広がりを見せてきた。
臓器提供者慰霊祭は、新型インフルエンザの流行期にあたり、やむなく中止した。そのかわりではないが、１０月末に日本移植学会が初めて、覚王山日泰寺において同じ形式で臓器提供者慰霊祭を行ない、当協議会が後援し、開催の協力を行なった。
上記以外に例年通り全国移植者スポーツ大会やグリーンリボンランニングフェスティバルにドナー家族を招待し、交流を深めるとともに、社会的認知度を高めるよう努力した。ただし一部のドナー家族は、全国移植者スポーツ大会において不快な思いをされたとのことで、当協議会としても、今後は、役員及び会員にドナー家族への理解を深めるよう努めなければならないと痛感した。
平成２１年度も前年度に引き続き９月には、日本移植学会においてドナー家族への顕彰が行われ、シンポジュウムでもドナー家族をテーマに開催され、当協議会としても協力し、引き続き平成２２年１月の高知での日本臨床腎移植学会でも同じテーマでシンポジウムを開催した。
３）臓器移植普及啓発事業
常に言われているように、我国における臓器移植の普及啓発活動は、全く不足している。一昨年１月、内閣府から発表された臓器移植に関する世論調査でも明らかなように、前回、前々回と変らず約８０％が臓器移植に関する情報が不足していると回答している。これが我が国において臓器移植が進まない大きな原因一つであり、当協議会としても、会の規模を上回る普及啓発活動を行ってきた。
平成１６年よりグリーンリボンを掲げたイベントを行って来たが、平成２１年度は、より積極的にグリーンリボンを活用し、当協議会開催のイベントでは全てにこれを掲げ活動を行うこととし、グリーンリボンの認知度を高めるとともに、臓器移植をリンクさせることにより具体的なイメージの国民全般への浸透を図ることとした。
また日本臓器移植ネットワークのグリーンリボンキャンペーンにも関与し、お互いに連携をより図るとともに、当協議会のイベントにも日本臓器移植ネットワークの参加を進め相乗効果が発揮できるよう活動した。特に世界移植者スポーツ大会や全国移植者スポーツ大会をコンテンツとして活用するよう努めた。
一般向けの普及啓発活動として、例年通りギフト・オブ・ライフ作品展、全国移植者スポーツ大会と東京新聞と協力してグリーンリボンランニングフェスティバルを中心とした活動を行った。加えて日本臓器移植ネットワークのグリーンリボンキャンペーンに協力し、記者会見などのイベントに協力した。腎不全患者を含む移植対象者や移植者など当事者、医療関係者への情報提供として移植セミナーを全国において１５回、移植医療勉強会を東京と大阪に加え３月に前年度に引き続き名古屋においても開催した。
＊グリーンリボンキャンペーン
平成１６年度にグリーンリボンバッジを制作し、移植医療のシンボルマークとして普及を行っているが、未だ広く一般へ浸透していない。平成２１年度からは、日本臓器移植ネットワーのグリーンリボンキャンペーンに関わり、谷川真理さんの記者会見に協力するとともに世界移植者スポーツ大会壮行会への露出も行った。また日本臓器移植ネットワークは、前年度に引き続きリーンリボンバッチを制作配布した。今後も日本臓器移植ネットワークや他団体と協力しグリーンリボンを移植医療のシンボルとして活用し、より一層、一般への浸透を図りたい。
＊グリーンリボン・ランニング・フェスティバル
１０月４日（日）にグリーンリボンキャンペーンの一環として、東京陸上競技協会と東京新聞・東京中日スポーツと共催し、AIGエジソン生命・アステラス製薬などの協賛を得て国立競技場において、第１回から続けて谷川真理さんをゲストに迎え「グリーンリボン・ランニング・フェスティバル」を行なった。
今回は、アメリカから肺移植の日系姉妹イサベル・ステンツェル、アナベル・ステンツェルを迎え、選手宣誓も彼女達が行なった。例年通りドナー・ドナーファミリーに感謝の気持ちを形として、花束贈呈をし、提供者へ感謝を込め３千の風船を大空に上げた。
グリーンリボン駅伝には、移植者、移植関係者など移植に関連する人達が多数参加した。一般参加者は、前大会同様に３千人に達した。
会場の形式が変り、スタンド下に世界移植者スポーツ大会の写真を展示し、イサベル・アナベルの「ミラクルツインズ」の書籍のコーナーも設けた。また日本臓器移植ネットワーク及び全国骨髄バンク推進協議会の展示も行った。このように移植をテーマにしたイベントに一般の方々が多数参加することはなく、参加者の感心を高めることが出来、移植医療への理解を広める大きな成果を上げることができた。
＊ギフト・オブ・ライフ作品展。
この作品展は平成６年に京都における国際移植学会において開催されたのを機会に、作品を更新しながら全国で作品展を開催している。この展覧会は、移植医療への感心を高める効果も高く、かつ費用対効果も大きいため、評価も高く各地区で何度も開催されている
平成２０年度も当協議会の臓器移植推進事業の大きな柱として、ギフト・オブ・ライフ作品展を開催した。平成１９年と同じく日本臓器移植ネットワーク・全国骨髄バンク推進協議会・角膜センター・アイバンクの協力を得て、２回目として東京都庁南展望室を借りきり原画展を４日間にわたり開催した。
そのほか原画展は、９月の日本移植学会に際し、大阪国際会議場において開催したのに加え、当協議会の独自展として、名古屋金山南ビル１階ロビーにおいて６月１３、１４日両日、鹿児島市黎明館においては１０月１９日から２７日９日間、新潟市のNEXT21においても平成２２年１月に開催した。新潟市においては、平成１９年の全国移植者スポーツ大会に合せて開催したのに続くもので今回も、原画を展示した。東京都庁や名古屋、NEXT21など、不特定多数の人が訪れるこのような施設での開催は、より効果的である。特に新潟では、若い人達の関心が高かった。今後もこのような施設での開催を積極的に行なって行く。
それ以外に複製によるパネル展は例年通り全国展開し、平成２１年度も３６カ所で開催し、今年度も、我が国の移植推進事業のうち１年を通じた最大の動員をしたものと推測される。
平成２１年度は１５周年を迎え、予算的には厳しいが、内容の充実と広報の強化し、より一層の展開を図りたい。
＊第１８回全国移植者スポーツ大会
平成２１度の全国移植者スポーツ大会は福岡県において１０月１０／１１日にＮＰＯ日本移植者スポーツ協会、（財）日本腎臓財団、（財）大阪腎臓バンクほかと共催し開催した。今回も運営は、過去に開催経験のある競技に精通した当協議会の幹事が運営委員として参加し、それを地元の役員が手伝う形で役割分担し、円滑に運営を行なった。
参加者は心臓１３名、肝臓８名（うち海外１名）、腎臓３４名（うち海外２名）、肺５名（うち海外３名）、骨髄１名（うち海外１名）、心肺１名、小腸１名、膵腎１名を含み、国内５７名、海外７名が参加した。そして今回もドナー家族１２名を招待した。家族、競技団体、ボランティアを含めると３００名に達した。
審判や地元ボランティアの協力と、なれてきた運営委員により、円滑に運営され、参加者のアンケート調査によると高い評価であった。また当日は４社の新聞及びテレビ局等メディアの取材があり、地方紙１紙、テレビ３局で放映され、普及啓発活動として十分な成果をあげることが出来た。
また今回もノバルティスファーマ株式会社の協賛を得て、１２歳以下の移植を受けた子供たちを対象とした「ノバルティス・ギフト・オブ・ライフカップ」を第６回目として行なった。参加は、国内１９名、海外２名合計２１名が参加した。
＊その他の推進活動
東海支部は、８月に安城市商工課の協力で市民広場チャレンジパークにブースを用意いただき、風船と無償提供のおもちゃ・新鮮野菜をともに目標数のカード配布を終えました。１０月の弥富高校学園祭、１１月１～３日には恒例の名城大学祭で「ドアラカード」の配布を行なった。
大阪支部は例年と同じく５月３～５日中之島まつりに参加し、大阪腎臓病患者協議会やシニアライオンズクラブの協力を得てキャンペーンを行なった。このキャンペーンでは、天候に恵まれ２万６千枚の意思表示カードを配布し、「小さな子どもたちを救える国に！」臓器移植法Ａ案早期改正を訴えた。
４）臓器移植に関する情報提供事業
＊移植セミナー・移植医療勉強会
平成２１年度は移植セミナーをアステラス製薬株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、中外製薬株式会社三社の協賛を得て名古屋市、福岡市（２回）、札幌市、東京都、釧路市、熊本市、新潟市、大津市、鹿児島市、沖縄宜野湾市、大阪市の計１２回開催した。前期に法改正の活動があり、開催が若干減少したことはやむを得なかったが、残念である。内容は原則的に講師を移植医と内科医の組み合わせとし、移植者も対象としたが、より移植希望者にウェートをおいた内容で行なった。
どの会場でも多くの参加者があり、充実したセミナーとなった。特に移植希望者には臓器移植医療に関す情報がほとんどないため、より効果的なセミナーができた。
医療者向けの移植医療勉強会は平成２１年度前期、臓器移植法改正の活動のため開催出来ず、後期に１１月に東京、平成２２年の３月に名古屋と大阪において開催した。内容は、例年同様に臓器ごとの移植医に加え提供側のドナー家族や提供施設の救急医にも講師を依頼した。また法改正後と言うことで、法改正の道のりと今後の課題について理事長の大久保が講演した。内容も充実し参加者も前年を上回った。
＊臓器移植に関する情報提供等の活動
現在では、インターネットによる情報発信は非常に重要である。当協議会では、既に１０年以上にわたりホームページを運用し、７年前からは臓器移植情報センターのホームページを開設し、二つをリンクさせ運用している。しかし二つのホームページを管理、運用するのは、現状の体制では難しく、臓器移植情報センターのホームページは、殆ど管理出来ていない。
当協議会のホームページは、ほぼ月１回の更新を行っている。今後も外部委託するには資金的に厳しく、運用を事務局で行なわざるを得ない。迅速に更新できるようになったとは言え、実際に更新業務を行なうのは、理事長一人であり、新しい展開が出来ていない上に、機能を十分に活かしているとは言えない。今後改善を図る必要がある。
メディア懇談会は、法改正の活動などにより、開くことが出来なかった。それに変わるものとして、情報交換の場として懇親会を２回開催した。しかし法改正のための記者会見を度々開くことにより、メディアとのパイプを太くなり、友好的な関係を保つことが出来た。また日本移植学会のメディアワークショップとも連携し活動した。
電話やメールによる年金や健康に関する相談は年間を通して受けた。しかし相談件数は、毎年減る傾向にある。
会員以外への情報提供として理事長が移植関連紙に原稿を執筆した。
＊会報の発行
平成２１年度、当協議会の活動の大きな柱の一つである会報ＪＴＲニュースは、年度内に４回の発行にとどまった。しかし昨秋新型インフルエンザについて２回号外を発行し、迅速に対応した。今後も定期的な会報発行に努めるが、迅速な情報提供のために号外を発行する。
当初予定していた編集委員会を設置も出来ず、会報の編集に携わるものは、相変わらず少なく、発行が遅れがちになった。今後も、より分かりやすく、親しみやすい誌面作りを心掛け、幅広く情報を提供し、双方向の情報交換を実現したい。
平成２２年度は、懸案の編集委員会を設置し、仕事を分担し、幅広い意見を取り入れつつ編集する。
５）日本移植者協議会の組織と運営
＊組織
平成１７年度後期より年会費を１０００円に値下げし会員獲得に努めているが、予想したほど会員数は増加していない。我が国の移植者は、腎臓、肝臓、心臓など総数は１万数千人に達していると予想されるが、組織率は２０％にも達していない。
会員はセミナーなどを通じ若干増加しているが、正会員・賛助会員をあわせて約２千人で、目標の３千人には、ほど遠く、更なる努力が必要である。
本年も総会及び研修会への参加者が多く、様々な問題について議論するとともに、情報の共有化に努めた、また役員間の親睦も深まった。
今後も幹事一人一人の自己啓発と研鑽を進めるとともに、移植医療に関わることについて議論し、意識の共有化を図りたい。
＊事務局
平成２１年度は、前年度同様に理事長、常勤事務局員１名、パート事務局員１名の業務体制に加え、ボランティアとして下野事務局長が週３日程度勤務した。財政状況が非常に厳しく、これ以上人員を増やす余裕はない。しかし大久保理事長が法改正のため東京への出張が続き、７月の法改正後は体制整備のために、かえって多忙を極める状況となった。そのため事務局ではそれを補うことが出来ず、しばしば事務局業務に支障をきたした。
平成２１年度は、会報発行などにボランティアの協力を得た。今後は地元近畿を主に会員にボランティア登録お願いし、会報発行以外でも協力参加可能な体制をつくり、業務量増加に対処したい。
特にギフトオブライフ作品展の作品整理や点検の業務が拡大しており、これに対して早急に対応する必要がある。
＊財政について
会費収入は、平成２１年度も正会員数は、徐々に増加しているが、賛助会員の減少もあり、予算を下回った。また会員からの寄附も例年を下回っており、特に「生命・きずなの日」記念祭への寄附は、毎年減少を続けていて当初の１０分の１以下となった。そのため会費の値下げのための減収分を補っていない。しかし平成２１年度は、製薬会社等からの寄附以外に多額の特別寄附があり、予算を１４％上回った。そのため会費収入などの減収を補い、全体の収入でも１６０万円上回った。
支出は、事務局運営費と推進事業費は、数％予算を上回ったにとどまり、ほぼ予算通りであった。ただ組織運営費は、総会、研修会に若干の自己負担を導入したため、参加者の増加にも関わらず、ほぼ予算通りであった。しかし理事会は、これは組織として喜ばしいことであるが欠席者が殆どなく、予算を上回った。
経費は前年度に比べ約４０万円増加したが、寄付収入の増加により、収支は改善し、５０万円を返済に充てることが出来た。
現在の我が国の移植医療をめぐる状況では、今後も当協議会の役割は増加すると思われる。法改正がなったとは言え、今後も臓器移植に関わる課題は山積している。体制整備、普及啓発とますます活発に活動しなければならない情況が続くと思われる。
今後も当協議会は、臓器移植医療の発展に寄与するとともに、当協議会の認知を高め、活動を行うための資金を、広く寄附として募るとともに、会員獲得に努めたい。